免責不許可事由と実際の事例について弁護士が解説します!
自己破産についてインターネットで検索すると、よく「免責不許可事由」に関する記事を多く見かけます。
自己破産手続上、借金の免除のことを「免責」と言いますが、この免責が不許可となる事由があるとされています。
「自己破産の申請をしても借金が免除にならない…」。このようなことは実際に起こりうるのでしょうか。
ここでは、免責不許可事由についての解説と、実際に泉総合法律事務所にて免責不許可決定が出た事例について紹介していきます。
このコラムの目次
1.免責不許可事由とは?
免責不許可事由とは、言葉の通り「免責の判断にあたって、その行為があると免責が許可されない事由」のことですが、破産の法律では、いくつかの免責不許可事由が定められています。
以下、1つずつ解説していきます。
(1) 財産隠し、財産の不当処分
自己破産をするにあたって、裁判所が定める財産(預金口座や加入している任意保険、不動産など)については全て報告しなければなりません。
例えば、本当は不動産を所有しているのに申告していなかったり、本当は50万円の価値がある自動車を5万円で売却したりする行為が、これに該当します。
その程度が酷いと、詐欺罪となり、刑事告訴される可能性もあるので、財産隠し、財産の不当処分は絶対にしてはいけません。
(2) 換金行為
クレジットカードで新幹線チケットや商品券、Amazonギフト券を購入し、即日売却する行為です。
街中で「クレジットカードの現金化」と看板を掲げる業者に連絡し、その業者主導で換金行為を行った場合も、この行為に該当します。
(3) 闇金
法律を大きく上回る金利で貸付を行っている闇金業者から借金をした場合、「著しく不利益な条件で借金をした」とされ、免責不許可事由に該当します。
(4) 偏頗(へんぱ)弁済
自己破産のルールの中に、「会社、個人を問わず、借金は全て平等に扱う」というものがあります。
自己破産を弁護士にお願いすると、一切の返済をしてはならないというルールも、この考えに基づくものです。
「金額が少ないから返しちゃった」、「勤務先の上司だから返しちゃった」のように、一部の債権者にだけ返済してしまう行為がこれに該当します。
残っている借金は、全て弁護士に報告するようにしましょう。
(5) 浪費行為(無駄遣い)
自己破産をする人の中で、最も多い免責不許可事由です。
一部の裁判所が定めている内容は、飲食(キャバクラ・クラブなど)、風俗(ヘルス・ソープなど)、買物、旅行、パチンコ・パチスロ(ギャンブル)、競馬、競輪、競艇、麻雀、株式投資(FX取引・仮想通貨取引)、先物取引です。
これらの項目の他(例えば、携帯電話ゲーム課金など)、「当時の収入・財産状況に見合わない過大な支出である」と判断された場合は、この行為に該当します。
(6) 信用情報の誤信
消費者金融などに借入を申し込む場合、給与明細や源泉徴収票を偽造し、収入が実際よりも多いと見せかけて借入をしてしまうと、これに該当します。
(7) 提出書類の改ざん
裁判所に財産状況を報告する際、その証拠資料を提出しなければなりません。
証拠書類とは、預金通帳、給与明細、保険証券、車検証などの写しになりますが、例えば修正テープを引いて実際とは異なる金額を記載し、この書類を証拠書類として提出してしまうとこの行為に該当します。
(8) 債権者隠し
裁判所には「債権者一覧表」と言う、いわゆる「債権者名簿」を提出しなければなりません。
この債権者一覧表に載せた借金が、支払い免除の対象となり、裁判所から破産手続開始決定文が通達されます。
借金が本来無い業者などを債権者一覧表にわざわざ載せる人はいないと思いますが、自己破産することを知られたくないなどの理由で債権者一覧表に載せない行為が、これに該当します。
(9) 説明義務違反、虚偽の説明
裁判所や破産管財人に説明を求められたことを怠ったり、借金の理由が本当はパチンコなどのギャンブルなのに生活費と申告する行為がこれに該当します。
(10) 破産管財人への業務妨害
多く見受けられるのが、自宅不動産を破産管財人が任意売却するにあたり、自宅の鍵を破産管財人に渡さない、又は買い手が付いているのに自宅から立ち退かないケースです。
破産管財人は不動産などのめぼしい財産を換価する任務を担っているため、その業務を妨害してしまうと、これに該当します。
(11) 各決定・確定から7年が経過していない
前回の自己破産手続における免責許可決定の確定日、個人再生の中で給与所得者等再生における再生計画認可決定の確定日、個人再生によるハードシップ免責の決定にかかる再生計画認可決定の確定日から7年が経過していないケースです。
最も多いケースが、前回の自己破産手続から7年が経過していないケースで、通常、自己破産をする場合は裁判所から「二度と借金をしないでください」とお灸を据えられます。
それにも関わらず、僅か7年もの間で再び自己破産をするまで借金をすることが大問題であるとされています。
(12) 破産手続に対する義務違反
通常、自己破産をすると裁判所へ出頭する必要があるのですが、特別な事情が無いにも関わらず、出頭しないケースです。
2.裁量免責とは
次に、皆さまに理解してもらいたいのが、「免責不許可事由が有る=借金の免除が認められない」というわけでは無いことです。
そもそも自己破産手続の目的は、「借金を免除し、人生をやり直すこと」とされています。
あまり良い事ではありませんが、パチンコなどのギャンブルで借金を増やし、結果自己破産を弁護士に依頼する人は大勢いらっしゃいます。
また、そもそも借金をしている最中に、ギャンブルや換金行為などが免責不許可事由に該当すると知っている人は少ないでしょう。
そこで、破産の法律では、
- 免責不許可事由について、正直に申告しているか
- 免責不許可事由に繋がる行為を止めているか
- 免責不許可事由について、深く反省しているか
- 借金を免除した場合、人生をやり直す生活基盤が整っているか
などが示せれば、裁判所の裁量で借金の免除を認めるとされています。
これを「裁量免責」と言います。
3.泉総合法律事務所での免責不許可事例集
実は、泉総合法律事務所が扱った案件の中で、ギャンブルなどの無駄遣いが免責不許可事由とされ、実際に借金の免除が認められなかったケースは1件もありません。
しかし、別の事情で借金の免除が認められなかったケースが実際に存在します。
ここでは、それらの事例について紹介します。
事例1:破産申立後に音信不通、管財人への報酬も未払い。
管財事件では、破産管財人へ報酬として20万円(事案により増額します)を支払わなければならないのですが、この支払いを怠り、また、連絡が取れなくなってしまったケースです。
弁護士はこの人の自宅にも行きましたが不在で、代理人として尽力出来ることがなくなってしまった結果、裁判所から借金の免除を認めない決定(「免責不許可決定」と言います)が出てしまいました。
何故いきなり音信不通になったのかわかりませんが、連絡も取れるようにし、ちゃんと破産管財人へ20万円を支払えば借金の免除は得られたと思います。
事例2:破産申立後、未申告の口座が発覚。その口座でギャンブルに興じていたことも発覚。
管財事件の場合、破産管財人に郵便物が転送されるのですが、その中に申告していなかった銀行からの案内書面が含まれていました。
破産管財人から、その口座の履歴を取り寄せるよう指示があり、確認したところ、弁護士に自己破産を依頼した後もその口座でギャンブルに興じていたことが発覚しました。
口座の申告を怠り、しかもその口座でギャンブルをしていたことに対し深く反省はしてくれましたが、ギャンブルに使った金額があまりにも高額であることなどを理由に、裁判所から借金の免除を認めない決定が出てしまいました。
弁護士に自己破産を依頼した際に全ての口座をしっかり申告し、ギャンブルも止めていれば、借金の免除は得られたと思います。
事例3:裁判所へ出廷せず、その後音信不通に。
管財事件の場合、借金の免除を認めるかどうかが報告される債権者集会という期日が設けられますが、自己破産する人もよっぽどの事情が無い限り、必ず出席しなければなりません。
しかし、債権者集会場に現れず、その後音信不通となってしまった結果(もちろん、弁護士は自宅にも行きました)、裁判所から借金の免除を認めない決定が出てしまいました。
もちろん良いことではありませんが、裁判所の期日をすっぽかす人は少なからず存在します。
しかし、すっぽかした後に何の報告・謝罪をしないと不誠実であると評価されてしまいます。
期日に現れなかった事情を裁判所にちゃんと報告・謝罪し、別日に延期された期日にちゃんと出席すれば、借金の免除は得られたと思います。
4.まとめ
以上が、免責不許可事由の解説と、泉総合法律事務所にて実際に借金の免除が認められなかった事例の紹介になります。
例え、ギャンブルなどの無駄遣いが借金の原因でも、その行為を正直に申告し、二度と借金をしないこと、更生することを裁判所にしっかりと示すことが必要です。文章では容易なことと伝わるかもしれませんが、正直そのハードルは低いとは言えません。
ですが、泉総合法律事務所では、免責不許可事由があった人の自己破産による解決実績が多数存在します。
そもそも何が免責不許可事由に該当するのか、該当する場合自分の借金は免除になるのか、お悩みの方は是非自己破産のエキスパートである泉総合法律事務所にご相談ください。ご相談は何度でも無料です。
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