法人破産

会社破産後にもう一度会社を作れるのか|法人破産処理と事業継承

会社破産後にもう一度会社を作れるのか|法人破産処理と事業継承

一時は順調に会社を経営してきたにもかかわらず、景気変動や取引先の不況などが原因で、経営破綻に追い込まれる中小企業は少なくありません。
新しく始めた事業が軌道に乗りかけていた矢先での資金ショートなどは、諦めきれないこともあると思います。

そこで、今回は、経営の行き詰まった会社を整理して新会社に事業を承継させることができるのか、自己破産後の会社設立について解説します。
会社の倒産だけでなく、事業承継・再チャレンジの際にも、弁護士はお役に立つことができます。

1.自己破産後の会社設立(法人設立)

中小企業が破産するときには、その経営者も、会社と同時に自己破産することが一般的です。

と言うのも、中小企業の負債は、経営者が個人で連帯保証していることがほとんどだからです。
あるいは、経営者が自前で調達した運転資金や、未払いの給与・役員報酬等を、決算上、短期貸付金や未払金といった名目で計上することで、経営者個人が会社に対する債権者の1人となっているケースも見られます。

とはいえ、自己破産した経営者が、再び会社を設立して役員(代表取締役・代表社員含む)となることは、法律上問題はありません

以前の法律(旧商法)では、破産者であることは株式会社の取締役の欠格事由となっていました。そのため、破産者(破産開始決定を受けた者)が会社役員に就任するには、免責(借金がゼロになること)による復権を待つ必要がありました。

しかし、現在の法律(会社法)では、破産者を取締役の欠格事由とする条項は削除されています。したがって、免責を受ける前であっても、会社の取締役に就任することは、全く問題ありません。

現在取締役の地位にある者が破産を申立て、破産開始決定を受けた場合、その時点で、一旦は取締役を退任する必要がありますが、その人を取締役に選任する旨の株主総会決議を行なえば、破産手続中であっても、再び取締役に就任することが可能です。

けれども、一定の業種については、代表者が破産者であることが、営業上の許認可を与える上での欠格事由であると定められている場合があります。

貸金業、旅行業、測量業、宅地建物取引業、卸売業、建設業、警備業、風俗業などの新会社を設立するときには、特に注意が必要です。それぞれの事業に適用される業法等のルールの内容は、予めよくリサーチしておきましょう。

2.自己破産後の開業の注意点

会社を破産させた経営者が再度会社を設立するときには、会社の破産だけでなく、経営者が自己破産したことによるデメリットにも注意しなければなりません。

新会社設立との関係で懸念される自己破産(債務整理)のデメリットは、次のとおりです。

  • 新会社の設立のための融資を受けることができない
  • 旧会社の取引先が今後も取引を継続してくれるとは限らない
  • 従業員の確保が難しい

(1) 新会社の融資を確保する手段

新会社の設立には、当然ながら資金が必要です。しかし、経営者が自己破産すれば、銀行などからの融資は事実上不可能となります。
すなわち、自己破産したことが信用情報に残ってしまうため(いわゆるブラックリスト)、破産後は最大で約10年間、金融機関から新たな融資を受けることができなくなるのです。

しかし、融資の問題は解決する方法がない訳ではありません。新会社設立のための資金捻出の方法としては、次の方法が考えられます。

  • 手元資金が蓄えられるまで会社設立を待つ
    多額の資金を投じなくても事業をスタートアップできる業種も増えています。
  • 経営者保証に関するガイドラインを適用して新規開業資金を残す
    経営者が会社の債務を連帯保証した分については、「経営保証に関するガイドライン」を適用した保証整理を行うことも有益です。
  • 信用力のある親族や共同経営者を代表者として新会社を設立する
    代表者以外の役員の信用情報まで審査されることは稀なので、代表者の信用力に問題がなければ金融機関からの融資を受けることは可能です。
  • 公的機関の「再チャレンジ支援」を活用する
    たとえば、「日本政策金融公庫」、「信用保証協会」や「商工組合中央金庫」には、過去に事業に失敗した事業家向けの融資制度が用意されています。

(2) 取引先や従業員の確保には倒産の仕方が重要

新会社への事業承継を考えていても、取引先との付き合いが断たれてしまえば事業は成立しません。
また、事業を支える従業員の確保も、中小企業の倒産では課題となることが少なくありません。

取引先や従業員をつなぎ止めておくためには、(旧)会社の「整理の仕方」がとても大切です。
「取引先に迷惑をかけない」、「新会社で働き続けることの不安を払拭」できるような配慮をもって、(旧)会社の整理を行う必要があります。

たとえば、経営破綻した法人の整理手続は、自己破産だけではありません。
特に、新会社による事業継続(事業譲渡)を念頭においているときには、破産ではなく、「民事再生」や「特別清算」といった、いわゆる「DIP型」とよばれる整理方法を選択することが有益です。

DIP型の倒産処理では、負債・財産の処分を「経営陣が主導して行う」ことができます。
それにより、取引先への支払いを金融機関よりも優先して行うことで、取引先の信用確保(今後の取引継続)を画策することも可能となります。

また、従業員に対しても、会社の倒産を突然通知するのではなく、倒産に至った経緯や、今後の事業方針・新会社に移行後(現在の会社の負債を整理すること)の経営の見通しを丁寧に説明することが重要といえるでしょう。

3.新会社に事業譲渡する際の注意点

新会社の設立や事業の引継ぎ(立ち上げ)は、旧会社の倒産処理に目処が立ったところで行うのが最も安全です。
破産手続終結後が最も確実ですが、第1回目の債権者集会後(事業の廃止の確定後)であれば問題がない場合が多いと思われます。

しかし、さまざまな事情で、それまで新会社の引継ぎ(立ち上げ)を待てないという場合もあるかもしれません。

経営が傾いている会社(譲渡会社)を残したままの状態で、新会社(譲受会社)を設立し事業承継を図ることそれ自体は、法律上禁止されているわけではありません。
しかし、現在の会社(譲渡会社)が経営破綻に陥っていることとの関係で、次の点に注意する必要があります。

  • 譲渡会社と譲受会社が同一とみなされると債務はなくならない(法人格否認の法理など)
  • 経営者個人として、損害賠償責任を請求される可能性がある(競業禁止・忠実義務違反)
  • 譲渡会社の破産手続で、事業承継が問題視される可能性がある

(1) 新旧会社が「同一会社」である場合

譲受会社として立ち上げた新会社が、資本的にも人的にも旧会社(譲渡会社)と同一である場合には、注意が必要です。
このような場合には、「法人格否認の法理」が適用され、「旧会社(譲渡会社)と新会社(譲受会社)は同一」とみなされてしまいます。

法人格否認の法理が適用されると、旧会社の債権者は、旧会社・新会社のいずれにも支払いを請求できます。

なお、代表者(社長)は異なるが、資本関係などから「実質は同一」と見られる場合にも、法人格否認の法理が適用される可能性があります。
旧会社が存続しているときに新会社を設立する際には、「外部スポンサー」の確保が重要といわれるのは、このような問題を回避するためです。

(2) 旧会社の経営者として損害賠償請求される可能性

新会社へ事業譲渡したことが、旧会社の経営者としての義務に反する場合があります。

新会社と旧会社は、当然同じ事業を行うことを前提としています。
そのため、旧会社(譲渡会社)が残った状態で、新会社に同じ事業を行わせることが、「旧会社の取締役」としての忠実義務・競業禁止に違反すると考えることもできるからです(会社法355条・356条)。

取締役が忠実義務・競業禁止に違反して会社に損害を与えた場合には、株主より取締役個人に対して損害賠償請求をされる可能性があります。

もっとも、中小企業の場合は、株式のほとんどを経営者もしくはその親族のみで保有している場合が多い(所有者と経営者が一致している場合が多い)ので、実際に株主と経営者の対立が問題になることは少ないかもしれません。
しかし、親族が株式を保有している場合であっても、事業承継に反対する株主がいて、経営者との利害対立が表面化しうる場合には、注意が必要でしょう。

(3) 旧会社の破産手続の中で生じる問題

新会社への事業譲渡が適切に行われなければ、譲渡会社の破産手続で事業承継が問題となることもあります。

たとえば、次のようなことに注意する必要があります。

  • 事業譲渡の資金を譲渡会社から捻出してはいけない
  • 譲渡代金が適正な価格である
  • 売掛金などの譲渡会社の資産を新会社に繰り入れない

譲渡会社は、負債を抱えたまま倒産させることになります。

譲渡会社に新会社から支払われる事業譲渡の代金は、債権者にとって重要な配当原資です。
したがって、新会社が譲渡会社の財産から譲渡代金を捻出することは、譲渡会社の破産手続で大きな問題となります。

また、譲渡代金が適正な金額よりも安い場合にも、同様に問題となります(譲渡代金が不当に安いということは、債権者に配当されるべき財産が不当に減らされることを意味します)。

特に、事実上同一会社への譲渡となる場合には、譲渡代金を安易に見積もりがちなので注意しなければいけません。
譲渡代金の決定に当たっては、専門家に依頼する等して、譲渡対象となる事業の価値を、事前にきちんとリサーチしておいた方がよいでしょう。

さらに、譲渡会社に売掛金などの資産があるときには、これを新会社に繰り入れてもいけません。譲渡会社の資産は、あくまで、破産手続を通じて、その債権者に配当されるべきものです。

新会社に譲渡会社の資産が入り込んでいる際には、譲渡会社の破産手続において、破産管財人から取戻権などを行使されます。

4.新会社設立での再起を考えている際は早めに弁護士に相談

近年では、事業家の再チャレンジを後押しする仕組みが増えてきています。そのため、事業に一度失敗しても、再起業することのハードルそれ自体はかなり低くなってきているといえます。

しかし、事業承継を行う際には、譲渡会社の債権者・取引先・従業員といった利害関係人への配慮をしっかりと図る必要があり、慎重・丁寧に対応しなければなりません。

事業承継に必要な資金の捻出や、事業承継の時期・方法を誤れば、不測のトラブルから新会社での事業が立ち行かなくこともあり得るのです。

泉総合法律事務所は、法人の倒産処理だけでなく事業承継にも多くの実績があります。会社に余力のある段階でご相談いただければ、さまざまな選択肢を提案することも可能です。
是非一度、泉総合法律事務所の無料相談をご利用ください。

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