法人破産

会社破産後にもう一度会社を作れるのか|法人破産処理と事業継承

会社破産後にもう一度会社を作れるのか|法人破産処理と事業継承

必死に会社を経営してきたにもかかわらず、景気変動や取引先の不況などが原因で経営破綻に追い込まれる中小企業は少なくありません。

新しく始めた事業が軌道に乗りかけていた矢先での資金ショートなどは、あきらめきれないこともあると思います。

そこで、今回は、経営の行き詰まった会社を整理して新会社に事業を承継させるときの注意点について解説します。

会社の倒産だけでなく、事業承継・再チャレンジの際にも弁護士はお役に立つことができます。

1.自己破産(債務整理)のデメリットと会社の新規設立

中小企業が自己破産するときには、その経営者も同時に自己破産することが一般的です。中小企業の負債には経営者が個人で連帯保証していることがほとんどだからです。

そのため、会社を破産させた経営者が再度会社を設立するときには、会社の自己破産だけでなく、経営者が自己破産(債務整理)したことによるデメリットにも注意しなければなりません。

新会社設立との関係で、懸念される自己破産(債務整理)のデメリットは次のとおりです。

  • 自己破産した経営者が会社の役員になること(会社を設立すること)は許されるのか?
  • 新会社の設立のための融資を受けることができるのか?
  • 旧会社の取引先は今後も取引を継続してくれるのか?
  • 従業員の確保をどうするのか?

また、会社が倒産したことで、取引先の信用を失ったり、従業員がやめてしまうことで、事業の執行に支障を来したりすることもあるかもしれません。

(1) 自己破産直後でも会社の役員になることは可能

自己破産した経営者でも会社を設立して役員(代表取締役・代表社員)となることは、法律上問題はありません。自己破産によるさまざまな制限は、「復権」によって解除されます。

ほとんどの自己破産は免責によって復権するので、経営者が自己破産による制限を受けるのは、数ヶ月間に限られます。

ところで、以前の法律では、破産者は株式会社の取締役の欠格事由となっていました。そのため、会社役員の就任は免責(復権)を待つ必要がありました。

しかし、現在の法律(会社法)では、「破産者を取締役の欠格事由とする条項」は削除されています。したがって、経営者が免責を受ける前であっても、会社の取締役就任することは、全く問題ありません。

しかし、一定の業種については、代表者が破産者であることが営業上の許認可の欠格事由となる場合があります。

貸金業、旅行業、測量業、宅地建物取引業、卸売業、建設業、警備業、風俗業などの新会社を設立するときには、特に注意が必要です。

(2) 新会社の融資を確保する手段

新会社の設立には資金が必要です。経営者が自己破産すれば、銀行などからの融資は事実上不可能となります。

自己破産したことが信用情報に残ってしまうため、最大で10年間、金融機関からの融資を受けることができません。

しかし、融資の問題は、解決する方法がない訳ではありません。新会社設立のための資金捻出の方法としては、次の方法が考えられます。

  • 手元資金が蓄えられるまで会社設立を待つ
  • 経営者保証に関するガイドラインを適用して新規開業資金を残す
  • 信用力のある親族や共同経営者を代表者として新会社を設立する
  • 公的機関の「再チャレンジ支援」を活用する

自己資金が貯まるまで会社設立を待つのが最も確実で安全な方法といえます。いまでは多額の資金を投じなくても事業をスタートアップできる業種も増えています。

手元資金を確保するという観点では、経営者が会社の債務を連帯保証した分については、「経営保証に関するガイドライン」を適用した保証整理を行うことも有益です。

「経営保証に関するガイドライン」は、金融機関などが経営者に保証債務の履行を求める際における自主的なルールを定めたもので、平成26年2月から運用がはじめられた新しい仕組みです。

このガイドラインを適用して連帯保証債務を整理できれば、次のようなメリットが期待できます。

  • 通常の自己破産よりも多くの現金を手元に残すことができる
  • 自宅を処分せずに済む
  • 信用情報機関への登録を回避できる

また、親族や共同経営者に信用力があるのであれば、それらの者を法人の代表者として法人を設立することも方法のひとつです。

代表者以外の役員の信用情報まで審査されることは稀なので、代表者の信用力に問題がなければ金融機関からの融資を受けることは可能です。

さらに、公的機関の再チャレンジ用融資の制度を上手に活用することも可能です。たとえば、「日本政策金融公庫」、「信用保証協会」や「商工組合中央金庫」には、過去に事業に失敗した事業家向けの融資制度が用意されています。

(3) 取引先や従業員の確保には倒産の仕方が重要

新会社への事業承継を考えていても、取引先との付き合いが断たれてしまえば事業は成立しません。

また、事業を支える従業員の確保も中小企業の倒産では課題となることが少なくありません。

取引先や従業員をつなぎ止めておくためには、(旧)会社の「整理の仕方」がとても大切です。「取引先に迷惑をかけない」、「新会社で働き続けることの不安を払拭」できるような配慮をもって、(旧)会社の整理を行う必要があります。

たとえば、経営破綻した法人の整理手続きは、自己破産だけではありません。

特に、新会社による事業継続(事業譲渡)を念頭においているときには、破産ではなく、「民事再生」や「特別清算」といった、いわゆる「DIP型」とよばれる整理方法を選択することが有益です。

DIP型の倒産処理では、負債・財産の処分を「経営陣が主導して行う」ことができます。

それにより、取引先への支払いを金融機関よりも優先して行うことで、取引先の信用確保(今後の取引継続)を画策することも可能となります。

また、従業員に対しても、会社の倒産を突然通知するのではなく、倒産に至った経緯や、今後の事業方針・新会社に移行後(現在の会社の負債を整理すること)の経営の見通しを丁寧に説明することが重要といえるでしょう。

2.新会社に事業を移行する際の注意点

新会社の設立や事業の移行(立ち上げ)は、旧会社の倒産処理に目処が立ったところで行うのが最も安全です。破産手続き終結後が最も確実ですが、第1回目の債権者集会後(事業の廃止確定後)であれば問題がない場合が多いと思われます。

しかし、さまざまな事情で、それまで新会社の立ち上げ(事業承継)を待てないという場合もあるかもしれません。

経営が傾いている会社(譲渡会社)を残したままの状態で、新会社(譲受会社)を設立し事業承継を図ることそれ自体は、法律上禁止されているわけではありません。

しかし、現在の会社(譲渡会社)が経営破綻に陥っていることとの関係で、次の点に注意する必要があります。

  • 譲渡会社と譲受会社が同一とみなされると債務はなくならない(法人格否認の法理など)
  • 「経営者としての損害賠償」を請求される可能性がある(競業禁止・忠実義務違反)
  • 譲受会社の破産手続きで、事業承継が問題視される可能性がある

(1) 新旧会社が「同一会社」であるときには、債務の負担はなくならない可能性

譲受会社として立ち上げた新会社が、資本的にも人的にも旧会社(譲渡会社)と同一である場合には、注意が必要です。

このような場合には、「法人格否認の法理」が適用され、「旧会社(譲渡会社)と新会社(譲受会社)は同一」とみなされてしまいます。

法人格否認の法理が適用されると、旧会社の債権者は、旧会社・新会社のいずれにも支払いを請求できます

なお、代表者は異なるが、資本関係などから「実質は同一」と見られる場合にも法人格否認の法理は適用される可能性があります。

旧会社が存続しているときに新会社を設立する際には、「外部スポンサー」の確保が重要といわれるのは、このような問題を回避するためです。

(2) 事業承継の時期・方法によっては、旧会社の経営者として損害賠償されることも

新会社への事業譲渡したことが、旧会社の経営者としての義務に反する場合があります。新会社と旧会社は、当然同じ事業を行うことを前提としています。

そのため、旧会社(譲渡会社)が残った状態で、新会社に同じ事業を行わせることが、「旧会社の取締役」としての忠実義務・競業禁止に違反すると考えることもできるからです(会社法355条・356条)。

取締役が忠実義務・競業禁止に違反して会社に損害を与えた場合には、株主より損害賠償請求される可能性があります。

もっとも、中小企業の多くは、株式のほとんどを経営者もしくはその親族のみで保有している場合が多いので、問題になることは多くないかもしれません。

しかし、親族が保有している場合であっても、事業承継に反対する株主がいる場合には、注意が必要でしょう。

(3) 旧会社の破産手続きの中で事業承継が問題とされる場合

新会社への事業譲渡が適切に行われなければ、譲渡会社の破産手続きで事業承継が問題となることもあります。

たとえば、次のようなことがないように注意する必要があります。

  • 事業譲渡の資金を譲渡会社から捻出してはいけない
  • 譲渡代金が適正な価格であること
  • 売掛金などの譲渡会社の資産を新会社に繰り入れないこと

譲渡会社は負債を抱えたまま倒産させることになります。

したがって、譲渡会社に新会社から支払われる事業譲渡の代金は、債権者にとって重要な配当原資です。

したがって、新会社が譲渡会社の財産から譲渡代金を捻出することは、譲渡会社の破産手続きで大きな問題となります。

また、譲渡代金が適正な金額よりも安い場合にも同様に問題となります。事実上同一会社への譲渡となる場合には、譲渡代金を安易に見積もりがちなので注意しなければいけません。

さらに、譲渡会社に売掛金などの資産があるときには、新会社に繰り入れてもいけません。譲渡会社に旧会社の資産が入り込んでいる際には、譲渡会社の破産手続きにおいて、破産管財人から取戻権などを行使されます。

3.新会社設立での再起を考えているときには、早めに弁護士に相談

中小企業の倒産を経緯とした事業譲渡は、新会社設立による「旧会社の負債整理」を目的としたものであることは、実務家にはよく知られています。

また、中小企業の事業譲渡は外部スポンサーを見つけづらいことが多く、親族が資本拠出する場合がほとんどです。

新会社の資本が譲渡会社の経営者の親族のものであるときには、破産管財人も資産隠しなどを疑い慎重に厳しく財産状況を調査します。

したがって、事業譲渡は、法人破産・事業承継に精通した弁護士の助言の下で慎重かつ丁寧に行われる必要があります。

また、新会社による事業を安定して行うためには、取引先・従業員の確保が必須です。取引先・従業員を確保するには、譲渡会社を整理するプロセスが非常に重要です。

取引先への迷惑や従業員の不安を軽減して事業承継を行うためには、会社の資金が完全にショートする前に、余力のあるうちから、事業承継を見据えた倒産処理を行うことがとても大切です。

4.川口市で法人破産をするなら泉総合法律事務所へ

近年では、事業家の再チャレンジを後押しする仕組みが増えてきています。そのため、事業に一度失敗しても再起業することのハードルそれ自体は、かなり低くなってきているといえます。

しかし、事業承継を行う際には、譲渡会社の債権者・取引先・従業員といった利害関係人への配慮をしっかりと図る必要があり、慎重・丁寧に対応しなければなりません。

事業承継に必要な資金の捻出や、事業承継の時期・方法を誤れば、不足のトラブルから新会社での事業が立ちゆかなくこともありえるからです。

泉総合法律事務所は、法人の倒産処理だけでなく事業承継にも多くの実績があります。会社に余力のある段階でご相談いただければ、さまざまな選択肢を提案することも可能です。

是非一度、泉総合法律事務所の無料相談をご利用ください。

無料相談受付中! Tel: 0120-011-443 平日9:00~22:00/土日祝9:00~19:00
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