自己破産の二つの手続き|管財事件と同時廃止事件とは?
「自己破産の手続きを申し立てたら、裁判所から『管財事件として扱う」と言われたんだけど、管財事件って何だろう。」
そのような疑問をお持ちの方も多いと思います。
自己破産の手続きには、管財事件と同時廃止事件があります。
両者の手続きは、費用や申立人(破産者)の負担の点で大きく違うため、どちらの手続きになるかは重大な事項です。
この記事では、管財事件や同時廃止事件の違い、管財事件と同時廃止事件の振り分けの基準について説明します。
このコラムの目次
1.管財事件とは
自己破産においては、借金が原則として全額免除される代わりに、破産者の財産を処分しなければなりません。
そのため、破産者の財産を調べる必要があります。
破産者の財産を調査するために選任されるのが、破産管財人です。
そして、この破産管財人が選任される手続きを「管財事件」といいます。
管財事件の予納金は裁判所によって異なりますが、最低50万円からとなっています。
とはいえ、個人で自己破産を行う場合、予納金を50万円も払うのは現実的ではありません。
そこで、もっと手続きを簡略化した自己破産手続きを行おうと考え、運用されているのが「少額管財事件」です。少額管財事件では、予納金の最低額は20万円です。
なお、「少額管財事件」と呼ばれるのは関東近郊などで、例えば東北では「簡易管財」、関西では「一般管財」と呼ばれています。
2.同時廃止とは
一方で、破産者に財産がない場合、わざわざ破産管財人を選任して財産を調査する必要もなくなります。
そこで、管財人を選任せず、破産手続き開始と同時に破産手続きを終了させてしまうのが「同時廃止」です。
破産管財人が選任されない分、予納金は当然同時廃止の方が安いです。
また、管財事件では債権者集会が行われるのに対し、同時廃止事件では行われません。
手続きの手間や費用について、同時廃止の方が負担も少なく済むのです。
3.管財事件と同時廃止の振り分けの基準
(1) 財産がある場合
同時廃止について、破産法216条1項は、「裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない」と定めています。
つまり、申立人の財産をもって、破産手続の費用(管財人報酬)を支払えない場合は、同時廃止となると定めています。
この管財人報酬は、多くの裁判所では最低20万円とされています。したがって、20万円以上の財産があれば管財事件となります(※現金の場合は33万円以上の場合)。
資産が20万円を超えるか否かは、資産の種類ごとに判断します。
ローンのついていない自動車が複数ある場合や、保険解約返戻金が複数ある場合などは、種類ごとに資産額を合算して20万円を超えるかどうかを判断します。
また、不動産がある場合は原則として管財事件となりますが、1.5倍以上のオーバーローンの場合(さいたま地裁管轄の場合)は、資産価値がないものとみなされ、同時廃止になることがあります。
なお、自由財産との関係では注意が必要です。現金であれば99万円までは自由財産とされているので、管財事件になったとしても債権者の配当に充てることはありません。
しかし、この場合であっても、33万円以上の現金があれば、管財事件となります。
(2) 免責不許可事由がある場合
財産がない場合であっても、管財事件に付されることがあります。それは、免責不許可事由がある場合です。
浪費や換金行為や一部の債権者に対する不公平な弁済(いわゆる偏頗弁済)などの免責不許可事由がある場合、裁量免責(裁判所が独自の裁量で借金を免除すると決めること)が受けられるかどうかが問題になります。
その場合は、管財事件として、裁量免責に値する事情が存在するか否か、調査を受ける必要があります。
場合によっては、破産管財人から任意での金銭の積立を求められたり、反省文の提出を求められたりすることがあります。
このようなケースの場合は、無理に同時廃止事件で進めようとすれば、裁量免責の判断ができず、免責不許可になるリスクもありますので注意が必要です。
なお、債務が大きくなってくると、浪費を裁判所に疑われやすくなりますので、その調査のために管財事件に付されることがあります。
明確な基準があるわけではありませんが、債務額が500万円以上の場合は注意が必要です。
もっとも、債務額が大きくとも、保証債務の場合、任意売却後の住宅ローン残債務など使途が明確なケースであれば、浪費にあたらないとの主張は可能ですので、検討が必要です。
(3) 個人事業主の場合
個人事業主の場合は、資産を有している蓋然性が高いとされるため、その調査のために管財事件となるのが通常です。
もっとも、確定申告をされている方の中には、実質的には会社員と変わらないケース、事業主としての実態を有していないケースもあり、その場合は管財事件にならないこともあります(ただし、慎重な検討が必要です)。
(4) 法人代表者の場合
法人代表者が破産する場合は、基本的に法人も破産するように求められますが、この場合も管財事件となります。
特に、実質的には営業を停止している場合であっても、清算決了登記がなされていなければ、法人破産を検討しないといけないため注意が必要です。
4.自己破産は泉総合法律事務所川口支店へご相談下さい
管財事件となるか同時廃止事件となるかは、実際に細かく事情を検討してみないとわからないこともあります。
とはいえ、相談時には、特に資産などを予め確認しておいていただけると、手続の見込みについて予想が立てやすくなります。
川口市、蕨市、さいたま市、京浜東北線沿線にお住まい、お勤めの方で、自己破産手続に不安がある場合は、一度泉総合法律事務所川口支店までご相談下さい。
-
2019年5月22日債務整理 自己破産をしても生命保険を解約しないで済む方法はある?
-
2019年9月24日債務整理 個人再生手続においてなぜ裁判所は給与明細を重要視するのか?
-
2019年8月14日債務整理 自己破産で銀行口座が凍結されたときに備えて