交通事故

交通事故被害者が知っておくべき、示談手続における注意点総説

交通事故被害者が知っておくべき、示談手続における注意点総説

交通事故に遭い、示談手続を進めるにあたり、どのようなことに注意するべきでしょうか。

以下、被害者が知っておくべき注意点を順番に説明します。

1.警察への届出を行うこと

(1) 交通事故の発生

交通事故が発生した場合、付近を警察官が巡回していたという事情でもない限り、警察で取り上げてくれることがありません。

ほとんどの交通事故は、交通事故の当事者が警察署に届け出ることで、警察が、交通事故が発生したことを証明してくれるのです。

そして、示談交渉を進めるにあたり、加害者が交通事故の存在を否定するかもしれません。

そのような場合に備えて、どんな小さな交通事故であっても警察に届け出る必要があるのです。

(2) 交通事故証明書の取得

警察に交通事故が起こったこと届出の目的は、交通事故証明書を取得することにあります。

交通事故証明書は、交通事故地を管轄する警察署のほか免許センターでも取得することができます。手数料として540円を納付する必要があります。

(2) 交通事故を警察に届け出る必要性について

①保険会社への届出の際に必要

保険会社に対し請求するためには交通事故が存在していることが必要ですので、交通事故の存在を証明するためにも警察に交通事故の存在を届け出る必要があります。

②加害者に刑事罰を求めるために必要

あなたが交通事故で傷害を負った場合、交通事故の整理としては人身事故となります。

人身事故の場合には、加害者は刑事罰に問われる可能性があります。

しかし、届出がないと警察としても捜査のきっかけがつかめないので、なかなか加害者を刑事罰に問うことはできません。そのためにも警察への届出が必要なのです。

③自賠責保険に対し請求するために必要

交通事故により傷害を負った場合、治療費などを自賠責保険に請求することが可能です。

そして、自賠責保険に対し請求するためには、交通事故証明書の提出が必要なのです。

そのためには警察に交通事故が届けられている必要があります。

④訴訟提起を行うために必要

交通事故に係る示談交渉が決裂した場合、裁判所に訴訟提起を行うことで事態を打開する方法があります。

裁判所に訴訟提起をする場合には、証拠を提出する必要がありますところ、交通事故が存在するという証拠は交通事故証明書を証拠とする場合がほとんどです。

そのためには、警察に交通事故を届けている必要があるのです。

2.保険会社に対し一括対応を求めること

(1) 治療費の支払

交通事故により傷害を負い、治療を受ける場合、治療費を医療機関に支払う必要がありますが、第1義的には、被害者が医療機関に支払わなければなりません。

しかしながら、被害者に高額の治療費を負担させるのは不合理なのは明らかです。

そこで、加害者又は加害者側の保険会社に治療費を負担させることが必要です。

(2) 一括対応

上記のような場合、保険会社に対し、治療費の立替をさせる方式を一括対応といいます。

保険会社に一括対応を求める場合、保険会社に対し、医療情報を保険会社に開示することの同意書、治療費の支払先を保険会社とする指図書などの書類を提出する必要がありますので、これらの書類を速やかに提出する必要があります。

そして、一括対応がなされると、被害者は保険会社からの治療費の打ち切りの連絡があるまでは、指定された医療機関で治療費の負担をせずに治療を受けることができます。

3.過失割合に注意を払うこと

(1) 過失割合とは

交通事故において過失とは交通事故の原因である不注意のことをいいます。

被害者に過失がある場合には、加害者に賠償できる金額から被害者の過失に対応する金額の部分だけ減額されます。

これを過失相殺といい、被害者と加害者の過失の割合を過失割合といいます。

(2) 過失割合の類型

交通事故の事故態様は、裁判例及び判例の集積により、ある程度は類型化できるようになっており、そのため過失割合は、別冊判例タイムズ、赤い本において、事故態様ごとに被害者と加害者の基本的な過失割合が定められております。

①自動車対自動車の場合

例えば、加害者の車両が信号機の設置されている交差点を右折しようとして、当該交差点を直進してきた被害者の車両と衝突した場合の基本的な過失割合は加害者が7割、被害者が3割となります。

②自動車対バイクの場合

例えば、加害者の自動車が信号機の設置されている交差点を右折しようとして、当該交差点を直進してきた被害者のバイクと衝突した場合の基本的な過失割合は、加害者8割5分、被害者1割5分となります。

③自動車対自転車の場合

例えば、加害者の自動車が信号機の設置されている交差点を右折しようとして、当該交差点を直進してきた被害者の自転車と衝突した場合の基本的な過失割合は加害者が9割、被害者が1割となります。

④自動車対歩行者の場合

例えば、加害者が運転する自動車が横断歩道のない幹線道路を直進中に、歩行者である被害者が当該道路を横断しようとして接触した場合の基本的な過失割合は加害者が8割、被害者が2割となります。

4.継続して通院すること

通院が継続していることは、入通院慰謝料を算定する上で、重要な意味があります。

(1) 入通院慰謝料とは

入通院慰謝料とは交通事故により、医療機関に入院又は通院を余儀なくされたた心理的な苦痛を損害として評価したものです。

基本的には、通院回数(実通院期間といいます)、通院期間でその額は決まります。

(2) 通院の継続と入通院慰謝料の関係

入通院慰謝料の計算は、自賠責の基準であれば日額4200円となりますが、裁判所に訴訟を提起する場合の基準(以下「裁判基準)といいます)では、若干計算方法が異なります。すなわち、別表1のとおり基本的な裁判基準での入通院慰謝料は、横軸に入院した場合の月ごとの慰謝料を、縦軸に通院した場合の月ごとの慰謝料を記載しております。

例えば、入院2か月、通院1か月の場合には122万円となります。

そして、通院を1週間に2回以上は通院していることを前提に計算されております。

【別表1】(単位:万円)

 

入院

1月

2月

3月

通院

53

101

145

1月

28

77

122

162

2月

52

98

139

177

3月

73

115

154

188

しかしながら、通院回数が上記の回数に満たない場合、別表2のとおり減額された金額でしか入通院慰謝料を請求することができなくなってしまいます。

しかも、実通院日数の3倍と通院期間の少ないほうを通院期間として算定される可能性があります。

例えば、むち打ちで画像などの所見がなく、通院期間が2か月であったが、うち実通院日数が5日の場合、入通院慰謝料の算定においては、別表2を用いて、通院期間2か月と15日(実通院日数5日×3)を比較して15日を慰謝料算定の基礎とします。

そうすると、別表2の計算においては、通院が1か月19万円なので、その2分の1の9万5000円が通院慰謝料の金額となります。

【別表2】(単位:万円)

 

入院

1月

2月

3月

通院

35

66

92

1月

19

52

83

106

2月

36

69

97

118

3月

53

83

109

128

5.保険会社はいつまでも治療費を立て替えてはくれない

(1) 症状固定と治療費の打ち切り

交通事故により受傷したとしても、治療を継続しておれば、時の経過とともに受傷に伴う症状は改善されます。

ところが、一定の時間の経過によりこれ以上は症状が改善しない状態に至ることがあります。この状態を症状固定といいます。

症状固定に達すると以降の治療費の支出は無駄になることから、基本的にその治療費の支出は損害とみなされません。

したがって、この場合には、保険会社も治療費の立替払いをストップすることになります。

これを治療費の打ち切りなどと表現したりします。

(2) 治療費の打ち切りとその対処法

治療費の打ち切りの連絡がされた場合、放置すると、その後の治療費については自己負担することになります。

そこで、まずは主治医に相談しましょう。その上で、医学的見地から、治療の継続ができるように主治医に口添えしてもらいましょう。

他方、主治医も治療の継続の必要はないと判断している場合には、保険会社に連絡して後1か月だけ治療を続けさせてほしい、1か月後に症状の改善がなければ症状固定を受け入れる旨の連絡をしましょう。

そうすれば、1か月程度であれば、治療の継続を認めてくれる場合も多いようです。

しかしながら、それも認めてくれない場合には、健康保険を使って、必要であれば治療を継続しましょう。

健康保険を使えば、通常は3割負担で済みます。この場合には、健康保険組合に対し第三者行為傷害届の提出を忘れないようにしましょう。

6.症状固定後には後遺障害の申請を行うこと

(1) 後遺障害の診断

症状固定を迎えると、基本的には、これ以降の治療費は損害として認められません。これ以降は、逸失利益と後遺障害慰謝料が主とした損害項目となります。

そして、実務上、逸失利益は後遺障害等級を取得していることが前提となりますので、後遺障害等級を取得するために、主治医の後遺障害の診断を受ける必要があります。

その上で、後遺障害診断書を取得しなければなりません。

なお、後遺障害診断書の費用は約1万円程度です。

(2) 後遺障害等級の申請

①事前認定

後遺障害等級を取得するためには前記の保険会社が一括対応をしている場合には、被害者が後遺障害診断書を保険会社に提出すれば、保険会社を経由して自賠責保険会社に対し後遺障害等級の申請を行ってくれます。

ただし、保険会社は、自己に有利な示談を進めるために、後遺障害の認定の判断に当たり、保険会社の顧問医の意見書などを提出します。

②被害者請求

被害者請求は、事前認定と異なり、被害者本人又はその代理人が自賠責保険会社に対し後遺障害認定の申請を行うことをいいます。

被害者請求が自賠法第16条に規定されていることから16条請求などといわれています。

被害者請求の申請書類は、自賠責保険会社に問い合わせれば、申請用紙と必要書類の一覧表を交付してもらえます。

【被害者請求の必要書類一覧】

◎印は必ず提出していただく書類です
○印は事故の内容によって提出していただく書類です。

下線の書類は保険会社に備え付けております。

取付先等

後遺障害

傷害

保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払請求書

 

交通事故証明書(人身事故)

自動車安全運転センター

事故発生状況報告書

事故当事者等

医師の診断書又は死体検案書(死亡診断書)

治療を受けた医師又は病院

診療報酬明細書

治療を受けた医師又は病院

通院交通費明細書

   

付添看護自認書又は看護料領収書

   

休業損害の証明は

(1) 給与所得者
事業主の休業損害証明書
(源泉徴収票添付)

(2) 自由業者、自営業者、農林漁業者
納税証明書、課税証明書(取得額の記載されたもの)又は確定申告書等

休業損害証明書は事業主
納税証明書、課税証明書等は税務署又は市区町村

損害賠償額の受領者が請求者本人であることの証明(印鑑証明書)
被害者が未成年で、その親権者が請求する場合は、上記のほか、当該未成年者の住民票又は戸籍抄本が必要です。

住民登録をしている市区町村、本籍のある市区町村

委任状及び(委任者の)印鑑証明
死亡事故等で請求権者が複数いる場合は、原則として1名を代理者として、他の請求権者全員の委任状及び印鑑証明が必要です。

印鑑登録をしている市区町村

戸籍謄本

本籍のある市区町村

   

後遺障害診断書

治療を受けた医師又は病院

 

レントゲン写真等

治療を受けた医師又は病院

③後遺障害の認定結果に不服がある場合

後遺障害の認定結果に不服がある場合には、自賠責保険会社に対し異議申立てをすることができます。回数には制限がありません。

手続きは保険会社又は自賠責保険会社にお問い合わせください。

7.過失相殺と既払金の控除の関係によっては手取額が増減すること

(1) 損害賠償金と過失相殺・既払金の関係

損害賠償額から過失割合による減額と自賠責保険等の既払金の順序により損害賠償金の手取額が異なります。

例えば、損害賠償金100万円、過失割合2割、既払金20万円の例で説明します。

まず、過失割合を先行した場合は、100万円×(1-0.2)=80万円-20万円=手取額60万円となります。

次に、既払金の控除を先行した場合は、100万円―20万円=80万円×(1-0.2)=64万円となります。つまり、既払い金を先に控除して、その後に過失割合による減額を行った方が、手取額が増えるのです。

加えて、労災保険金の一部については、損害賠償からの控除しないものもあり、この場合には、損害賠償金と当該保険金を両取りが可能となるのです。

(2) 過失相殺と既払金控除の先後関係

①過失相殺と自賠責保険金との先後関係

自賠責保険金は、過失相殺後に控除します。先の例で説明すると、損害賠償金100万円、過失割合2割、自賠責保険の既払金20万円の場合、100万円×(1-0.2)=80万円-20万円=手取額60万円となります。

②過失相殺と健康保険金との先後関係

健康保険金は、過失相殺前に控除します。先の例で説明すると、損害賠償金100万円、過失割合2割、自賠責保険の既払金20万円の場合、100万円―20万円=80万円×(1-0.2)=手取額64万円となります。

③過失相殺と労災保険金との先後関係

労災保険金のうちいわゆる療養補償給付金は、過失相殺後に控除します。

先の例で説明すると、損害賠償金100万円、過失割合2割、自賠責保険の既払金20万円の場合、100万円×(1-0.2)=80万円-20万円=手取額60万円となります。

他方、休業特別支給金・障害特別支給金については、既払金の控除の対象にはなりません。損害賠償金との両取りが可能となります。

8.交通事故の示談交渉なら弁護士にご相談を

以上のとおり交通事故の示談で知っておくべき知識を整理して解説しました。

実際の事件の処理は、法律の専門家である弁護士の助言を受けて進めることを強くお勧めします。

示談交渉だけでなく、交通事故でお悩みの方は、どんな些細なことでも泉総合法律事務所にご相談ください。解決実績豊富な専門家が、事故の始まりから解決までしっかりサポート致します。

初回のご相談は1時間無料となっております。

無料相談受付中! Tel: 0120-011-443 平日9:00~22:00/土日祝9:00~19:00
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