未成年が準強制性交等の嫌疑で逮捕された場合の弁護活動
「未成年の息子が、準強制性交等で捕まってしまった」「この後の流れはどうなるの?弁護士に相談すると助けてくれるのだろうか」
未成年が準強制性交等の疑いで逮捕された場合、被疑者である未成年者はもちろん、その家族も大変動揺するでしょう。
未成年の被疑者に対し、弁護士はどのような対応をしてくれるのでしょうか。
この記事では、未成年が準強制性交等の罪で逮捕されてしまった場合の弁護士の弁護活動の内容を、事例を交えながら解説します。
このコラムの目次
1.「準強制性交等」とは何か
準強制性交等罪は「準」とはなっていますが、強制性交等罪と同様の法定刑であり、重大犯罪です。
刑法では、「強制性交等罪」「準強制性交等罪」は次のように規定されています。
刑法第177条 強制性交等罪
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。刑法178条2項 準強制性交等罪
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。
準強制性交等罪の刑罰は、強制性交等罪と同様の「五年以上の有期懲役」となります。罰金刑がありませんので、起訴をされた場合は無罪ではない限り必ず懲役刑が科せられます(刑を減軽する何らかの事情があれば、執行猶予を獲得できる可能性はあります)。
準強制性交等罪の「心神喪失」とは、泥酔・熟睡・麻酔・高度の精神病など、正常な判断能力を失っている状態をいい、例えば泥酔している女性に対して性交等をすることが当てはまります。
また、「抗拒不能」とは、恐怖・驚愕・錯誤等、心神喪失以外の理由によって抵抗することが不能・困難な状態をいい、例えば相手の見分けがつかないほどの暗がりで人妻に夫と誤信させて性交等をすることが当てはまります。
2.準強制性交等罪の弁護活動の具体的内容
(1) 取り調べに関するアドバイス
準強制性交等罪で逮捕をされれば、未成年であれ成人と同様に警察・検察の取り調べを受けることになります。
この時、拘束されたことに動揺するあまり、捜査官に促されるまま、本当は酒に酔わせてなどいないのに「泥酔するまでお酒を飲ませました」と言ってしまったり、「抵抗できないよう監禁してしまいました」と言ってしまったりする方もいらっしゃるようです。
このような嘘の自白をすれば、その自白が証拠となり、被疑者にとって不利に働いてしまいます。いったん書面に残された後に発言を覆すことは難しいです。仮に一度した発言を撤回する書面を作ってもらえたとしても、その弁明が捜査官や裁判官に信じてもらえる保証はありません。
虚偽の自白や不利となる供述をしてしまわないよう、取り調べでは必要なこと以外を黙秘すること、記憶にあることとないことを明らかにすることが重要です。
弁護士は、取り調べに先立ち、疑いを欠けられている事実に関して何を言うべきで、何を黙秘すべきかを被疑者にアドバイスします。そうすることで、実際にやってしまった事以上の重い責任を問われてしまうことを防ぎます。
また、被疑者は逮捕・勾留されたことにより、一般社会から隔絶され、精神的・肉体的に窮地に追いやられています。家族と面会することもできない場合があり、これは未成年にとって大変な負担となります。不利益な証言の原因となるのみならず、心身の不調にもつながります。
そのため、弁護士が頻繁に被疑者と面会を行い励ますことで、被疑者を精神的に安定させる必要があるのです。
(2) 勾留の不服申し立て等
相手が抗拒不能ではなかった、同意の上での性交であったなど、準強制性交等罪に当たるような行為をしていない場合、被疑者の行いは罪にはならず犯罪の嫌疑がないということを明らかにして、未成年者が家庭裁判所に送致されない、あるいは処分を受けないようにしなければなりません。
また、未成年者であれば、学校に行っている場合がほとんどです。長期欠席を理由に退学処分を受けることがないように、身柄拘束からの早期解放をすることが重要です。
このためには、勾留に対する不服申し立てを行う必要があります。
弁護士は、未成年の身体拘束が長引かないよう(勾留をしない又は延長せず釈放してもらえるよう)意見書などを提出して検察に働きかけます。
(3) 被害者との示談交渉
犯行が事実存在した場合、被疑者の処分結果に最も影響を与えるのは、被害者との示談の成否です。被害者との示談が成立している場合、「被害者はすでに被害を回復し被疑者を許している」として、不起訴や執行猶予付き判決など、被疑者にとって有利な結果をもたらすことができる可能性が高まります。
しかし、被害者との示談となりますと、準強制性交等罪のような重大な性犯罪の場合は大変高度な交渉事になります。
犯行により傷ついた被害者の心情に配慮しながら、被疑者の反省の気持ちをしっかりと伝え、様々な約束をした上で納得のいく示談金を受け取ってもらわなければいけません。
特に、被疑者が未成年となれば、被害者も未成年である可能性がありますが、その場合の示談の相手方は親権者である両親となります。我が子が準強制性交等の被害に遭ったとあれば、両親の怒りも大きく、示談交渉の席にさえついてくれないことがあります。
仮に被害者の連絡先を知っていたとしても、被害者と被疑者が直接示談交渉をすることは、被害者の二次被害防止や精神上の問題を考えても不可能です。無理にコンタクトを取ろうとすると、脅迫と受け取られてしまい、更に罪が重くなる可能性もあるでしょう。
被害者との示談交渉は、刑事事件の手続きに長けた弁護士に依頼するべきです。弁護士は被疑者の代理人として、真摯な姿勢で被害者と示談交渉を行います。
3.事案概要(事案内容を修正しています)
罪を犯したことが事実である場合には示談交渉等を通じてできるだけ処分を軽くすることを目指しますが、そもそも罪にあたる行為をしていない場合には、弁護人は通罪につながる証拠を不当に作成されないようにする防御的な活動を行うことが主たる任務となります。
以下では無実の未成年の学生が準強制性交等の嫌疑で逮捕されてしまった当事務所の実際の事例を紹介します。
(1) 未成年の学生が準強制性交等の嫌疑で逮捕
未成年の学生であるAさんは、たまたま街で出会った少し酔っていた成人女性と同意の上でホテルで性交渉を持ち、女性はその後まもなく普通の様子で部屋から出て行きました。
しかし、しばらくして、警察官がホテルに来てAさんを逮捕しました。
逮捕された容疑は、「お酒に酔って抵抗できない状態の女性に対して性交渉を行った」という準強制性交等です。
(2) 弁護士への刑事弁護の依頼
警察署からAさんが逮捕されたという連絡を受けたAさんの保護者は、刑事弁護の依頼を泉総合法律事務所にしました。
保護者は、Aさんが準強制性交等や監禁などを行ったというのは、普段の行動からあり得ないことで、何かの間違いに違いないとの理由から、Aさんが無実であり、処分を一切受けないようにしてほしいとのことでした。
また、保護者は、Aさんが学生であり、逮捕が学校側に知られ退学処分とならないように、早期に身柄解放してほしいとの要望もありました。
Aさんは少年であったため、犯罪の嫌疑が認められれば、必ず家庭裁判所に送致されてしまうことになります。
この場合には、疑いをかけられた犯罪の重大性から、少年鑑別所への収容という監護措置が十分予想されました。仮にこれが認められれば、捜査終了後家庭裁判所での処分を受ける前に4週間も鑑別所で拘束されることとなり、Aさんの心身や社会生活に多大な悪影響が想定されました。
(3) 弁護の結果、勾留満期を待たずに釈放
少年の場合、犯罪の嫌疑が認められると必ず家庭裁判所に送致されてしまい、逮捕勾留された状態で家庭裁判所に送致されると、多くの場合、少年鑑別所に収容されて、その上で、最大で約2か月間拘束が継続されます。
今回のように、逮捕勾留されてしまったものの、無実であることを明らかにして、家庭裁判所に送致されないようにすることを目指す場合、早い段階で弁護人がついて、密に少年本人との面会を行い、少年が捜査機関の取り調べのプレッシャーに負けて嘘の自白をしてしまわないようにする必要があります。
今回は、逮捕後、早い段階でご両親からのご依頼があったため、速やかにAさんと面会して取り調べに関する注意点等をアドバイスし、その後も3名の弁護人で代わる代わる密な面会を重ねることができました。
その結果、Aさんが勾留満期を待たずに釈放され、証拠不十分のため家庭裁判所にも送致されることなく事件を終結させることができました。
4.準強制性交等は泉総合法律事務所川口支店へご相談下さい
準強制性交等の嫌疑で逮捕されまった場合、初期の段階から弁護活動を行うことが重要です。
逮捕から勾留満期までは、たった23日しかありません。それ以内に、犯行が本当の場合は被害者との示談を成立させる必要があります。また、無実の場合はいち早くそれを証明し、釈放をしてもらわなければなりません。刑事事件はスピード勝負です。
川口市、蕨市、さいたま市、京浜東北線沿線にお住まい、お勤めの方で、刑事事件の被疑者となってしまった方やその家族は、ぜひお早めに泉総合法律事務所川口支店までご相談下さい。
早期の弁護活動開始により、不起訴を勝ち取ることができる可能性があります。
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