交通事故

自転車と車の事故はどちらが悪い?|過失割合の考え方

自転車と車の事故はどちらが悪い?|過失割合の考え方

自動車同士の事故であれば、それぞれの車両に同程度の不注意があったら、「過失割合」も同程度となります。

しかし、自転車と自動車が接触した交通事故の場合には、自転車の方が弱い立場になるために、過失割合が修正され、自転車の過失割合が低めになるケースが多いです(弱者救済の論理)。

では、自転車と自動車では、具体的にはどのくらいの過失割合になるのでしょうか?

今回は、自転車と自動車が接触した交通事故における過失割合の考え方を説明します。

1.自転車と自動車の過失割合の考え方

(1) 自転車の過失割合は低くなる

自転車と自動車が接触する事故など、自転車が当事者となる交通事故のことを「自転車事故」と言いますが、この自転車事故の場合、自動車同士の事故とは過失割合の基本的な考え方が異なります。

自動車同士の事故の場合には、どちらかが特に強い立場ということもありませんし、事故を回避するための能力も両者が同程度です。

これに対して自転車事故の場合、自転車は車体も小さく速度も遅いですし、ライダーの身体がむきだしになっていて、事故に遭ったときのダメージも大きいです。

また、事故を避けるための能力も、自動車に比べると低いと考えられます。

このように、自転車は自動車より弱い立場になるので、自転車事故の場合には、自転車の過失割合が自動車の過失割合より小さくなります。

双方が同じ行動をとっていたら、自動車の過失割合の方が大きくなるのです。

(2) 相手が四輪車でもバイクでも同じ

自転車の過失割合が小さくなるのは、相手が四輪車の場合でもバイクの場合でも同じです。

四輪車とバイクが接触した場合、バイクの方が弱い立場なので、バイクの過失割合が四輪車より小さくなります。しかし、自転車と四輪車が接触したときと自転車とバイクが接触したときには、同じ過失割合の基準が適用されます。

相手がバイクのケースの方が、自転車の過失割合が上がる(バイクの過失割合が下がる)ということはありません。

以下では、自転車と自動車(四輪車及びバイク)との交通事故に適用される、具体的な過失割合を確認していきます。

2.基本的な自転車と自動車の事故の過失割合

(1) 信号機のある交差点における直進車同士の出会い頭の交通事故

自転車の信号機の色:自動車の信号機の色

自転車の過失割合:自動車の過失割合(%)

青:赤

0:100

赤:青

80:20

黄:赤

10:90

赤:黄

60:40

赤:赤

30:70

(2) 信号機のない交差点上での直進車同士の出会い頭の交通事故

道路状況

自転車の過失割合:自動車の過失割合(%)

同幅員の交差点

20:80

自転車が広路、自動車が狭路

10:90

自動車が広路、自転車が狭路

30:70

自動車側に一時停止義務あり

10:90

自転車側の一時停止義務あり

40:60

自転車が優先道路を走行

10:90

自動車が優先道路を走行

50:50

自動車が一方通行違反

10:90

自転車が一方通行違反

50:50

(3) 信号機のある交差点で、自転車が直進、自動車が右折

自転車の信号機の色:自動車の信号機の色

自転車の過失割合:自動車の過失割合(%)

青:青

10:90

黄:青信号で進入したが、途中で黄に変わって右折した

40:60

黄:黄

20:80

赤:赤

30:70

赤:黄信号で進入したが、途中で赤に変わって右折した

50:50

赤:青信号で進入したが、途中で赤に変わって右折した

70:30

赤:右折の青矢印信号

80:20

(4) 信号機のある交差点で、自転車が右折、自動車が直進

自転車の信号機の色:自動車の信号機の色

自転車の過失割合:自動車の過失割合(%)

青:青

50:50

青信号で進入したが、途中で黄に変わって右折した:黄

20:80

黄:黄

40:60

赤:赤

30:70

(5) 信号機のない交差点での自転車事故(一方が直進、一方が右折)

事故状況

自転車の過失割合:自動車の過失割合(%)

自転車が直進、自動車が右折

10:90

自転車が右折、自動車が直進

50:50

(6) 自転車の過失割合が低くなる具体例

上記を見ると、自動車と自転車が同じ条件であれば、自転車の過失割合が低くなっていることがわかります。

たとえば、信号機のある交差点上において、自動車と自転車の双方が赤信号で交差点に進入して出会い頭で交通事故になった場合、両者の違法性や責任の度合いは同じように思えます。

四輪車同士の交通事故であれば、このようなときの過失割合はそれぞれが50%:50%となります。

しかしこのような場合でも、自転車事故のケースでは自転車の過失割合が30%、自動車の過失割合が70%となっています。

3.自転車の過失割合が高くなるケース

自転車事故の場合、自転車の過失割合が高くなることはないのでしょうか?

上記を見ていただいてもわかるのですが、自転車の過失割合が高くなるケースはあります。

まず、自転車が信号無視していたケースです。

自転車が赤信号で交差点に進入した場合には自転車の過失割合が80%になりますし、自転車が赤信号で横断歩道を渡ろうとして交通事故につながったケースでは、自転車の過失割合が75%に及びます。

信号無視は「赤信号で進入した」場合に限られません。黄信号の場合には「原則停止」しなければならず、進行して良いのは、急に止まることによってかえって危険を発生させるようなケースに限られます。

そこで、自転車が黄信号で交差点に進入した場合にも、自転車の過失割合が比較的高くなります。

また、自転車が一時停止義務違反をしていたケースや自転車が一方通行違反をしていたケース、自動車が優先道路を走行していたケースなどでも自転車の過失割合が比較的高くなっています。

つまり、自転車が道路交通法違反の行為をしていると、自転車側の過失割合が上がるということです。

自転車に乗るときには、交通ルールを意識して慎重に運転することが大切です。

4.自転車事故の修正要素

自転車の過失割合が上がるケースとして、「修正要素」が適用される場合も考えられます。

修正要素とは、交通事故の個別の事情により、上記で紹介した基本の過失割合を修正させる事情です。

自転車側の過失割合を加算する加算要素と、自転車側の過失割合を減算する減算要素があるので、それぞれについて、みてみましょう。

(1) 自転車の過失割合が上がる加算要素

自転車側の過失割合が上がる加算要素としては、以下のようなものがあります。

①事故の発生時間が夜間

夜間の場合、自動車が明るいヘッドライトをつけるので自転車から自動車を発見するのは容易ですが、その逆は困難となるので、自転車の過失割合が上がります。

②酒気帯び運転

法律の定める規定以上に飲酒して、酩酊状態に至っていない程度の酒気帯び運転のケースです。

③無灯火運転

明かりをつけないで自転車を運転していたケースです

④2人乗りをしていた

2人乗りは危険なので、自転車の過失割合が上がります。

⑤並進運転

2台以上の自転車が並んで走行していた場合、事故の危険性が高まるので自転車の過失割合が上がります。

⑥傘差し運転

一方の手で傘を持ちながら片手で運転していると危険なので、自転車の過失割合が上がります。

⑦スマホを操作しながらの運転

スマホや携帯電話などを操作しており、片手で運転していたり、画面に注目して前方不注視になっていたりした場合には、自転車の過失割合が上がります。

⑧酒酔い運転

酩酊状態で運転していたケースです。危険度が高いので重過失として自転車の過失割合が大きく上がります。

⑨ブレーキが壊れている自転車を運転

この場合にも、危険度が高いので重過失として自転車の過失割合が大きく上がります。

(2) 自転車の過失割合が下がる減算要素

次に、自転車の過失割合が下がる減算要素についてもみてみましょう。

①運転者が児童や高齢者

自転車は、自動車やバイクとは違って免許制度がありません。そこで、子どもや高齢者が運転しているケースもあります。

そのような場合、自転車に適切な対応を要求しにくいので、過失割合が下がります。

②自転車が自転車横断帯を通行

道路交通法上、自転車横断帯を通行する自転車は強く保護されています。

そこで、自転車が自転車横断帯を走行しているときに自動車が接触して交通事故が起こった場合、自転車の過失割合が大きく下がります。

③自転車が横断歩道を通行

付近に自転車横断帯がない場合に自転車が横断歩道上を走行していて交通事故が起こったときにも、自転車の過失割合が下がります。

横断歩道の近辺では、自動車は横断歩道上に歩行者がいないかどうかに注意して、いつでも停止できるように徐行しながら運転しなければならないからです。

ただし付近に自転車横断帯がある場合には、自転車は自転車横断帯を走行しなければならないので、横断歩道上を走行していると問題があり、自転車の過失割合は下がりません。

④自動車が速度違反

自動車が時速15キロメートル以上の速度違反をしていたら著しい過失、時速30キロメートルを以上の速度違反をしていたら重過失となって、それぞれ自動車の過失割合が上がります。

その分自転車の過失割合は減算されます。

⑤自動車の著しい過失

自動車に著しい前方不注視やスマホを見ながらの運転、酒気帯び運転などの著しい過失があれば、自動車の過失割合が上がって自転車の過失割合が下がります。

⑥自動車の重過失

自動車が無免許運転や酒酔い運転などをしており、重過失が認められる場合には、自動車の過失割合が上がって自転車の過失割合が下がります。

重過失の責任は著しい過失の責任より重いです。

5.自転車事故で過失割合に納得できない場合の対処方法

保険会社が提示する過失割合に納得できない人が多い!

自転車を運転していて四輪車やバイク相手に事故に遭うと、一般的には加害者(事故の相手)が加入している自動車保険会社の担当者と示談交渉を進めていくことになります。

自転車の場合、被害者は保険に加入していないことも多々ありますし、加入しているとしても示談交渉代行サービスがついていないこともあるため、自転車のライダーが自分で示談交渉をしなければならないケースが一般的です。

すると、過失割合の保険会社の担当者が、過失割合を提示してきます。

たとえば「このようなケースでは、基準によると、過失割合が4:6になっています」などと言ってきますが、それ以上には根拠が提示されないことが多いです。

すると、自転車に乗っていた被害者は「納得できない」と感じます。

その理由は、いくつかあります。

(1) 相手の提示に納得しにくい理由

①当事者の心理

1つは、交通事故に遭ったとき、当事者はどうしても「自分は悪くない」と考えてしまうことです。

②虚偽を述べている可能性

また、交通事故の相手方(自動車やバイクの運転手)が事故状況について虚偽を述べている可能性があります。

自転車相手に交通事故を起こしたら、相手は刑事事件になる可能性が高いのですが、その場合、自分の過失割合が上がると処罰が重くなります。そこで、事故の状況について自分に有利になるように嘘をつくのです。

ところが加害者の保険会社は加害者の言い分をもとに過失割合を算定するので、被害者にとって納得できない数字になってしまいます。

③保険会社による基準で過失割合を算定している

さらに、加害者の保険会社が、法律の定める基準値よりも、加害者に有利に過失割合を算定するケースもあります。

一般人は、過失割合の適正な基準の数字を知らないことが通常ですから、加害者の保険会社が「このようなケースでの過失割合は〇対〇です」などと言ってきたら反論することが難しく、「そうですか」と受け入れる方が多いのです。

そこで、保険会社があえて被害者に高めの過失割合をあてはめてくることも珍しくありません。

以上のような事情があるので、自転車事故の被害者が過失割合算定の際に相手の保険会社の提示額に納得できないのも当然なのです。

ときには相手の保険会社の担当者から、まるで自転車が悪者のように言われて心外な思いをする被害者の方もいらっしゃいます。

(2) 弁護士に依頼すると適正な過失割合が算定される

このようなとき、弁護士に相談すると解決できる可能性があります。

加害者が虚偽を述べているのであれば、実況見分調書などを取り寄せて正確な事故状況を調べることが可能ですし、加害者の保険会社が過大な過失割合を割り当てているなら、法的な過失割合をあてはめて被害者側の過失割合を大きく下げられるケースもあります。

6.過失割合で困ったら泉総合法律事務所へ

上記のように、弁護士が示談交渉を代行すると、被害者の過失割合が下がって賠償金が大きく増額される例も多々あります。

自転車事故で、相手の保険会社から過失割合の提案を受けて納得できない思いを抱えているならば、お早めに弁護士までご相談下さい。

泉総合法律事務所なら、初回のご相談は無料で承っておりますので、安心してご利用頂けます。また、弁護士費用特約を使ったご依頼も歓迎しております。

弁護士に依頼すれば、被害者の方が正当な額の慰謝料を受け取れるよう、過失割合についても十分に検討し、保険会社と交渉します。交通事故でお困りの方は、泉総合法律事務所の専門家・弁護士にどうぞご相談ください。

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